生徒の学習意欲を引き出す教材教具の開発と実践
〜前橋市教材教具展出品を通して〜
はじめに
前橋市では毎年、教職員による自作教材・教具展を開催しており、平成17年度の実施で第26回を迎えた。この展示会は、市内の教職員や学校関係者が開発・実践した教材・教具を展示し、優秀作品を表彰するものであり、毎年数十件の出品がある。
私は平成9年度に前橋市に教職員として採用されてから、出品機会がある年にはほぼ毎回出品してきた。その理由は簡単である。毎年最低1つは自分と生徒への挑戦として新しい教材・教具を作っていくことを心がけているためである。新しい教材や教具と出会って学習意欲を見せる生徒の姿。それは教師としての自分が授業への意欲をかき立てる原動力でもある。続けなければ簡単に途絶えてしまう。それが私が出品を続けてきた理由である。
本稿では、これまで私がこの展示会に出品してきた教材・教具及び実践を紹介したい。それぞれの紹介文は、出品当時に使用した説明用の文章に加筆修正したものである。
1 平成9年度出品『インターネットによる教材提供ホームページ』(のちに発展させ、現在もウェブページ「教室のアイデア」として運営中)
近年、英語科の授業においては、生徒のコミュニケーション能力の向上などを目的として、コミュニケーションゲーム、ワークシートなど、多用な教材を用いた授業が主流になっている。先生方の中では、明日のコミュニケーション活動やワークシートづくりに悩んでいる人も多いのではないか。この作品では、ウェブページを活用して教材提供を行うシステムを実現している。
本作品の特長は、提供する教材が学年を目安に言語材料別に整理されており、明日必要とする教材を手早く手に入れることができることができる点である。さらに、データをワープロ文書でダウンロードすることができることから、授業する先生がワークシート等を生徒の実態やご自分の指導方法にあわせて簡単に手を加えることができる工夫もされている。
現在、本ウェブページは開設以来4年を経過し、英語科を中心に進路指導、学級経営等幅広い教材データベースになりつつある。進路指導のページにおいては、学年別月別に活用できるワークシートをインデックススタイルで標記してあり、クリックすることで簡単に文書をダウンロードできる。学級経営のページでは、教室掲示や学級指導で有効に活用できる掲示物やワークシート、各種たよりなどもダウンロードすることができる。
この作品は、ウェブブラウザのもつデータベース機能に注目した作品であり、教材提供にとどまらずインターネット上のウェブページの可能性の試みの一つでもある。例えば教師が自分の開発したワークシートやアイデアを整理したり、共有化を図るために利便性の高い方法であると言えよう。
本ウェブページは、今後も実践者の各種アイデアを集合させ、教材データベースを充実させていく予定である。
2 平成11年度出品『教室環境・工夫あれこれ』
@コンピュータ印刷物、ラミネーター、カバーフィルムの効果的利用
教室環境をなるべく美しくしたい。掲示物を工夫して、きれいな環境環境を作りたい。そう思っても、なかなか生徒の実態とあわない、掲示方法がうまくいかない、さらに、学級担任の仕事の中で掲示物のメンテナンスが難しい、そんな悩みをお持ちの学級担任の先生は多いと思う。
これら日常で使用される教具は、雑誌等で紹介されることはあっても、実際に教具を見ないとイメージが湧かないものである。今回教具展に出品した掲示類は、多くの先生が教室でお使いになれ、長持ちし、そして「メンテナンスに手間がかからない」ことを重視したものである。製作に時間のかかるものもあるが、ラミネーター、カバーフィルムを利用することでまるまる1年間、きれいな掲示を保つことがでる。
なお、清掃当番表の円盤は表計算ソフト「エクセル」でグラフを作成し、カラー印刷したものをカバーフィルムで表面保護したものである。円を書くのが苦手なので考案したのだが、耐久性は高く、まる1年間、そりなどまったくなく使える。
@ブラックボード週間予定表
利用方法は単純である。毎週末に次週の予定を書き込む。色とりどりのカラーペンがあるので、生徒にお願いすると喜んで書いてくれる。校時変更や行事の管理などに大変重宝。
使用しているブラックボードはホームショップで手に入る。専用のマーカーも色とりどりで売られている。「週間予定表」、「曜日」の表示は、ワープロでカラー印刷したものをラミネートし、裏側にマグネットを貼ったもの。耐久性も高く、簡単には壊れない。
Bコルクボード掲示板
教室の掲示物は生徒任せでもよいのだが、そうするときれいな掲示を維持するのは難しい。かといって、先生がやると結構手間である。意外と手間に感じるのが発行されるたびの張り替え。のりで貼ったり、テープをはがしたり。画鋲の数も多いと抜き差しが面倒である。そこで、「糊、テープ、画鋲の抜き差しの手間」いずれも要らない、コルクボード掲示板の登場である。
教室の一部にコルクボードを設置することで、意外なくらいこれらの手間を省くことができる。見た目もきれいであり、生徒も喜んで張り替え作業を手伝ってくれる。
コルクボードはホームショップで簡単に手に入り、しかも安価なため、傷んでも取り替えが楽である。掲示板のタイトルは、やはりカラー印刷した印刷物をラミネートしたものである。
3 平成12年度出品『プレゼンテーションソフトを活用した視聴覚教材』
プレゼンテーションソフトは視覚・聴覚に効果的に訴えるという点で、魅力的な教材づくりに大変有効な手段である。今回は英語の授業で使用した以下の教材を紹介したい。
@人物当てクイズ(授業例:Who is this?)
デジカメで撮影した写真を映像加工ソフトで処理し、マイクロソフト社のパワーポイントで編集した。作成作業は一度覚えればそれほど手間はかからない。いろいろな人物写真を使って、Who
is this?などの言語材料の導入で使うと楽しい。
A持ち物当てクイズ(授業例:Whoes desk is
this?)
デジカメで撮影した写真をそのままパワーポイントで編集してある。Whose
desk is this?などの言語材料の導入に最適である。


A文法事項のまとめ(板書)
パワーポイントを用いて編集した板書である。文の構造が段階的に説明され、視覚的に理解できるようになっている。内容的にはもう少し工夫が必要であると思うが、新しい試みとして参考いただければ幸いである。
以上、パワーポイントを使った教材例をいくつか紹介してきたが、導入、まとめに使うと生徒の興味や関心を強く引き出すことができる。このほかにも、「動物当てクイズ(授業例:What
animal is this?)」や、何をしているのかを当てさせる「動作当てクイズ(授業例:What
is he doing?)」などにも使える。社会の授業においては「民族衣装当てクイズ」や「国名当てクイズ」などにも応用できると思う。
4 平成13年度出品『オリジナル英会話学習ビデオ』
英語の習熟の度合いもまちまちで、人数も多い教室において、生徒に実用的な英会話練習に取り組ませたり、新しい英会話表現を興味をもって学習できるようにすることはなかなか難しい、というのが現場の英語の先生たちの実感ではないだろうか。特に、「この表現はこういうときにこのように使うと便利」ということは口で説明してもなかなか伝わるものではない。では、実際に使用場面を見せればいい、ということになるのだが、ALTと準備をしておいても、セリフを間違えたり、互いに照れてしまったり、その日のクラスの雰囲気などでうまくいったり、いかなかったり。
テレビの英会話番組を模して英会話プログラムビデオを作成してみてはどうだろう、という発想は、このような日頃の授業の反省から生まれた。このビデオの利点としては、@言語材料の選択について、入念に事前準備ができること A言語の使用場面の状況設定がしやすいこと B編集やスキット内容の工夫によって生徒が興味を持つように仕組みやすいこと、などがあげられる。
毎回、キーセンテンスを決め、解説、スキット視聴、キーセンテンスの練習、シャドウイングの順で撮影しておいたビデオを編集する。授業の最初に視聴し、生徒はテキストに従って表現の練習をしたり、シャドウイングをしたりする。生徒を登場させたり、他の先生に出演してもらったりすると生徒は俄然興味を持って視聴する。授業後にはキーセンテンスがはやり言葉のようになって、休み時間の教室や廊下で聞こえるようになったらしめたものである。
5 平成17年度出品『英語学習支援ウェブページ』
生徒に習熟度に合わせて学習させたいという願いは、指導者が共通して持っている願いであると思う。コンピュータを活用した指導のメリットは生徒が自分の興味や関心、習熟度に合わせ、選択しながら学習を進めることができる点である。
この学習支援ウェブページでは、学習者が英語の授業で学ぶべき内容をウェブページを使いながら学習できるよう工夫がされている。学習者自身は画面をクリックしながら教科書の本文、センテンス、単語のモデル・リーディングを繰り返し聞いたり、自分の音読を録音して聞くことができる。また、新出の英語表現を使って会話練習を行ったり、文法説明を聞いたり、本文の意味を確認したり、さらには簡単な演習問題にチャレンジすることもできる。また、題材に関連したホームページにリンクするボタンが隠されているなど、楽しみながら学ぶこともできるようになっている。
この教材は文の構造を理解したり、文の意味を理解することに役立つことはもちろんであるが、制作者がもっとも期待しているのは「音読表現の向上」である。
┌────────────────────────────────────┐
│ @単語、文のモデルリーディングを繰り返し聞く。
│
│ │
│ A自分の音読を録音してモデルリーディングと聞き比べる。
│
│
│
│ Bさらに音読、録音をする。 │
└────────────────────────────────────┘
自分が必要とする音声や映像を瞬時に取り出し、必要な回数視聴し、自分の音読を録音・再生しながらブラッシュアップするという@〜Bまでの活動により、自信を持って音読ができるようになる。
6 平成18年度出品『英語・基本ドリル』
中学校3年生になって、ようやく勉強に目覚めてきた生徒。でも、1年の内容が理解できていなくて、せっかくやる気があっても問題集などがまったく分からない。そんな生徒がいないだろうか。
1年の内容から復習させたいが、市販の問題集では分量が多すぎたり、内容が難しすぎてすぐに行き詰まってしまう。先生としても、時間をかけて教えてあげたいけれども、一人に何十分も時間をかけていたらたくさんの生徒に教えることはできない。
そんな悩みを解消するのがこの基本ドリルである。1年生の内容を45の細かいステップで区切り、生徒が10分以下で取り組むことができるものにした。英語が苦手。長い時間プリントをするのが苦手。基礎が全く身に付いていない。そんな生徒でも続けられる。問題数が少ないため、先生も簡単にまる付けができる。10分間くらいで数十人の○付けが可能な便利なプリントである。解説が書いてあるため、生徒に説明してあげるときもあまり時間がかからない。
毎日1枚。45日で無理なく1年生の学習内容を終えることができる。まる付けをしたら、新しいプリントを差し込んであげよう。「苦手な英語を毎日勉強している。」そんな気持ちになるだけでも励みになるはずだ。
なお、この英語・基本ドリルはウェブページからもダウンロードすることができる。ドリルは生徒の実態や先生の指導方法などにあわせて自由に加工して活用できるようになっている。以下にドリルを2例紹介する。
【英語・基本ドリル Step1 be動詞@】
【英語・基本ドリル Step28 前置詞いろいろ】
おわりに
教師として初めて教壇に立ったとき、10年後の教師としての自分の姿など到底想像するはできなかった。教材研究に追われ、日々授業をするのが精一杯だったからである。しかし、10年間で一区切りつけられるような仕事の仕方をしたい、という思いは常に心の底にあった。転職を繰り返して本職についた私は、他の先生よりスタートラインがだいぶ遅れてしまっている。一年一年を他人より重く受け止めなければならない、というのは自分にとって当然のことでもあった。
本稿では、この10年間に私が前橋市教職員教材・教具展に出品した作品の概略をまとめた。十分な実践であったかについては、はなはだ自信はない。しかしこれからの10年間、今までの実践経験をふまえて、さらに生徒の学習意欲を引き出せるような工夫を続けていきたいと願っているのは確かである。そのためには、新しい教材・教具や工夫を凝らした指導法と出会って、輝くようなやる気を見せてくれる生徒をしっかり受け止める感性を、自分自身が失わないことがなによりも大切だと感じる。