鳥のひなを観察して面白いことを発見した人がいます。ローレンツという人です。
ローレンツは、ある日、ガンのひなを観察してあることに気がつきました。卵からふ化したひなが、じっとローレンツを見続けたかと思ったら、首を下げてローレンツにあいさつを始めます。 「彼女の黒い瞳でじっと見つめられたとき逃げださなかったばかりに、また、不用意にふたことみことなにか口をひらいて、彼女の最初のあいさつを解発してしまったばかりに、私がどれほど思い義務をしょいこんでしまったか、さすがの私も気がつかなかった。」
ガンのひなはその後、ローレンツの姿を見失っては大騒ぎをし、ローレンツの後ろをくっついてまわることになります。どうしてだか分かりますか?そう、ひなはローレンツのことを自分の親だと思い込んでしまったのです。
その後、ローレンツは観察の結果、鳥の雛はふ化して最初に見たものを親だと思い込んでしまうことを発見しました。ローレンツはこれをインプリンティング(刻印づけ・刷りこみ)と名付け、実験を続けます。その結果、このインプリンティングは、生物に仕組まれたもので、一度起こってしまうともとには戻らないことを発見しました。要するに、一度親だと思い込むと、修正がきかなくなってしまうわけです。
不幸にもウミガメを親としてインプリンティングしてしまったくじゃくが、大人になってからウミガメにしか求愛しなくなった例などを紹介しています。
ローレンツは、さらにこの働きが、ふ化したあと、一定の時間だけ起こり、それを過ぎてしまうとこの働きは起こらなくなってしまうことも発見しました。これは臨界説といって、様々な現象にも当てはまる働きと考えらています。
ちなみに、キャロル・バラードという監督が作った「グース」という映画は、このインプリンティングという現象を扱った映画です。少女がふ化させたガンの母親代わりになって、子ガンを育てるという、なかなか感動的なお話です。
さて、その後いろいろな人がローレンツの実験に挑戦しました。ヘスという人は、ふ化した後のひなに、おもちゃの鳥を見せたり、ぴかぴか光る電球であったり、くるくる回る円盤を見せました。すると、ひなはおもちゃや電球や円盤を親と思い込んでしまったそうです。
でも、ここまで聞くと、なんだかまずいことが起こりそうな気がしませんか?さて、そのお話は次回続けることとしましょう。
★実験をした人:コンラッド・ローレンツ/出典:『ソロモンの指環―動物行動学入門』日高敏隆訳
1998
☆参考にした本:藤田統他編著『心の実験室2』福村出版 1977
第4の扉 私が鳥の親?!〈インプリンティング(刻印づけ・刷りこみ)〉