さて、もうお昼の時間が近いですね。みなさんは3,4時間目ともなって、おいしい給食のにおいがしてきたらどうなりますか。え、「勉強をやめる」?それはこまるなあ!
 では、梅干しを目の前に出されたらどうなりますか。きっと口の中が酸っぱくなって、唾液が出てくるのが感じられるでしょう。これは、食べ物のにおいをかいだり、梅干しを見てその酸っぱさを思い出したりするからでしょうね。でも、ベルの音が鳴るとよだれが出るという犬がいたとしたら、この犬はベルを食べるのかな!?(笑)
さて、犬とベルを使って有名な実験をした人がいます。名前は聞いたことがあるのじゃないかな。「パブロフ」という人です。何?よだれが出てきた?なんかの食べ物と間違えているんじゃないですか。パブロフは人の名前です!
 さて、パブロフは犬のほっぺたのところを手術して、唾液(よだれですね)が外の容器に流れ出るようにしました。そして、食べ物を与える前にベルを鳴らしてからえさをあげる、ということを繰り返したのです。何が起こったかわかりますか?そう、何回もこれを繰り返すうち、この犬はベルの音を聞いただけで大量の唾液を出すことが分かりました。もちろん犬はベルを食べるわけではありません。(笑)普通の状態なら〔えさがもらえる→唾液が出る〕ということになるわけですが、えさの前にベルを鳴らすことを繰り返すことによって、〔ベルの音が鳴る(えさがもらえるぞ)→唾液が出る〕となってしまったのです。
 話は変わるけど、みんなはいま、突然大きな音がしたらどうなるだろう。すごく大きな音。ほとんどの生徒は飛び上がって「びっくりしたあ」と言うでしょうね。これは、何かを考えて飛び上がっているのではありませんよね。大きな音がしたから、「よし、飛び上がろう」と思って飛び上がる人はまあいません。(笑)
 無条件にするこの反応のことを、ちょっと難しい言葉で〈無条件反射〉と言います。これは生まれつき持っている反応で、あとで身についたものではありません。
 その一方で、梅干しを食べたことのない人は目の前に梅干しをおかれても唾液は出ないといいます。梅干しが食べ物で、すっぱいものだ、と知っているからこそ〔梅干し(食べ物・すっぱい)→唾液が出る〕となるのですね。これをやはり難しい言葉で〔条件反射〕と言います。
 人間でもベルの反応を試すことができるんですよ。手順を言いますので、ひまがあったらやってみてください。
 暗い部屋にベルと鏡を持ち込んでみてください。照明をつけて、ベルを鳴らし、電気を消します。これを何度も何度も繰り返します。この間、私たちの瞳(瞳孔)は明るいときには小さくなり、暗くなると大きくなる動きを繰り返しています。さて、それでは明るい状態で鏡を目の前に持ってきて、自分の瞳をじーっと見ていてくださいね。そしてベルを鳴らしてご覧なさい。あなたの瞳(瞳孔)がすうっと大きく鳴るのが見えるから!これは私が実際に試してみたので間違いありません。ベルの音で、暗くなるぞ〜と脳が判断して、勝手に瞳を大きくし、暗くなることに備えているんです。なんとまあ、おどろきではありませんか。
 あ、終業のチャイムが鳴りましたね。こらこら、そこのKくん、よだれを垂らすでない...。

☆参考にした本:ロジャー・R・ホック編 『心理学を変えた40の研究』2007 梶川達也 花村珠美訳 ピアソン・エデュケーション, pp13-21、ダニエル・P. トーデス (著), オーウェン ギンガリッチ (編集), Daniel P. Todes (原著), Owen Gingerich (原著), 近藤 隆文 (翻訳)『パヴロフ―脳と行動を解き明かす鍵』

◆注記:初期の実験ではパブロフはベルではなく、こちこち鳴るメトロノームを使っていたようですね。暗闇での瞳孔開閉実験は、鏡を壊さないように気をつけてください。20〜30回くらい繰り返す必要があるそうです。
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第10の扉 「パブロフの犬 ベルを食べる犬?」