箱の話の続きです。今度はネズミが箱の中に入ります。

 スキナーという人は、しかけのある箱にネズミを入れました。しかけとは、この箱の一部にレバーを用意しておいて、ネズミがこれにさわるとえさが出てくるというものです。

 さて、ネズミは箱の中を走り回り、たまたまレバーに触れ、えさをゲットします。するとネズミはレバーを引くとえさが出てくるということを学び、繰り返しレバーを引いてえさをゲットします。

 これをみたスキナーは考えたのです。「レバーを引くとえさが出る」ということを学習し、「えさをもらうためにレバーを引く」という行動をとらせることができるなら、「えさ」をちらつかせることによってもっと難しいことをやらせることができるのでは、と考えました。そうしてスキナーの弟子たちはウサギしつけてコインをブタの貯金箱に入れさせたり、ブタに掃除させる実験を行いました。今でこそ、動物をえさで訓練することは当たり前ですが、当時はとても新鮮な発見だったのです。

 その後、スキナーの想は箱を飛びだし、第二次大戦中には、ハトを訓練してミサイルを誘導させることまでアメリカ軍に提案したのです。実際に実施されることはなかったそうですが。

 スキナーの発見の中で、もう一つ、今でも私たちがよく覚えておいた方がよい実験があります。先ほどのレバーを押すネズミですが、えさを与えなくなるとどうなると思いますか。はい、レバーを押すのを止めてしまいます。前回のお話で言うと「消去」されることになります。

 スキナーはレバーを押す回数とえさを与える回数を変えてみました。40回に1個とか、60回に1個のようにです。するとどうでしょう。「消去」はなかなか働かず、ネズミはレバーを押すのを止めようとしません。

 でも、スキナーが一番驚いたのは、次の実験の結果です。40回に1個とか60回に1個のように数を決めず、適当な間隔でえさを与えると(いつえさが出てくるか分からない状態)、ネズミは気が狂ったようにのようにレバーを押し続け、もっとも「消去」が起こりづらかったそうです。

 どうして人は賭やギャンブルにのめり込んでしまうのか。どうして欲しくもない商品を買ってしまうのか。

 スキナーの実験の結果は、そんな私たちをいましめるものではないでしょうか。


参考文献:ウィリアム・T・オドノヒュー、カイル・E・ファーガソン 『スキナーの心理学』 2005 二瓶社、ローレン・スレイター 岩坂彰訳 『心は実験できるか』2005 紀伊國屋書店

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