前回、えさをもらわなくても一生懸命にパズルを解くサル、そして、えさをもらうようになるとうまくパズルができなくなるサルの話をしました。
デシという人が面白い実験をしました。ソマというパズルがあって、とても面白いパズルなのだそうですけど、デシはこのパズルを2つのグループの大学生にやらせてみました。ひとつのグループの大学生はこのパズルを解くと報酬として1ドルもらえました。もう一つのグループの大学生はいくつ解けても報酬はもらえないことになっています。
デシは両方のグループに、同じ時間の休憩時間を与えました。なにをしていてもいいよ、という休憩時間です。この休憩時間に大学生たちが何をしたのか、デシは観察しました。
報酬を与えられたグループの大学生は休憩時間になると、パズルをやめ、休んだり、雑誌を読んだりしたそうです。一方で、報酬を与えられないグループの大学生はどうだったかというと、何をしてもいい休憩時間にもかかわらず、熱心にパズルを解いて楽しんだそうです。
デシは、報酬が「パズルを解こう」とう気持ちを損なってしまうのだと考え、この現象をアンダーマイニングと名付けました。
デシはこのアンダーマイニングについて面白い寓話も紹介しています。
ある町で、ある男が店を開きました。そこに嫌がらせをする一団の不良男たちがやってきて、店の前で大声で叫んだりして商売を邪魔します。不良たちは店を開いた男を追い出そうとしたのです。ところが、店を開いた店主はその不良たち全員に10セントあげるのです。不良たちは喜んで、翌日もやってきて大騒ぎして商売の邪魔をします。店主は「今日は5セントしかあげられない」とお金を渡します。次の日もやってきた不良たちに、店主は「今日は1セントしかあげられない」と告げます。すると不良たちは、「そんなわずかな金では大騒ぎなんかできない」と怒って帰ってしまいます。店主は無事店を守ることに成功したのです。
さて、みなさんもこんな経験がありませんか。お家の人のお手伝いを毎日していて、あるとき、そのお手伝いにお駄賃をもらいました。翌日お手伝いをするとき、「今日もお駄賃をくれないの」というと、今日はダメ、と言われる。とたんにやる気が失せる。
ですからみなさんも、こうした方がいいかもしれませんね。「お駄賃をあげるよ」って言われたら、「ラッキー!」って思わずに、「これは癖になって良くない」と考えて、「けっこうです!」
...とできたら、あなたはエライ!
参考文献:エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト 『人を伸ばす力』1999 新曜社
桜井茂男 『学習意欲の心理学』1997 誠信書房
第21の扉 「褒美はあったほうがいいのか? アンダーマイニング」